小企業の経営指標の使い方

Income tax

Originally uploaded by Alan Cleaver.


経営指標というと、難しく感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実務的な手続きとしては、期末時の貸借対照表、損益計算書の数字から抽出して、計算式で数値を算出しているに過ぎないので、決して難しい作業ではありません。注意すべきところとしては、参考にすべき同業他社の指標の選択の仕方であったり、自身の会社の特殊事情を考慮することが挙げられます。ここを間違えてしまうと、全く参考にならない指標となり、ただの数字遊びとなってしまいます。それと、これをいってはなんですが、指標を鵜呑みにしすぎないということも大事だったりします。あくまで決算時点の数字ですので、企業によっては税金を多く払いたくないが為に意図的に赤字にしたという場合もありますし、各企業によって会計処理が異なるというのもあります(会計における恣意性は完全には排除出来ない)。なので、あくまで参考程度にとどめておくことですね。具体的な経営指標の項目と算式についてはこちらを参考にして下さい。

又、経営指標をどう活用すればいいのかといった話ですが、①同業他社と自社との比較をすることで、単なる聞き取りによるSWOT分析ではなく、自社の強み、弱みを数字から把握できる→改善すべき事項が”なんとなく”ではなく明示的にしやすい
②開業及び新規事業をする上で、大よそ該当するであろう業種の特徴を把握できる。要するに事業としてイケるかどうかが掴めるといったことが挙げられるかと思います。

では、具体的に指標を見てみましょう。まず政策公庫の小企業の経営調査を元に同業他社の経営指標を確認します。政策公庫の経営指標ではまず大分類で区分わけされていおり、その内、従業員規模別に区分された指標があります。該当する業種で従業員規模別があれば、そちらを参考にしましょう。

例として、飲食店・宿泊業に分類されている”喫茶店”をみてみましょう。
喫茶店の主な項目(平均値)としては、

  • 売上高総利益率:69.8%
  • 売上高営業利益率:-4.0
  • 従業員一人当たり売上高:10,789千円
  • 1客席当たり売上高:806千円
  • 当座比率:60.3%
  • 標本数:90社
  • 黒字且つ自己資本プラス企業数では、

  • 売上高総利益率:71.4%
  • 売上高営業利益率:2.4%
  • 従業員一人当たり売上高:14,533千円
  • 1客席当たり売上高:1,086千円
  • 当座比率:75.0%
  • 標本数:17社
  • となっています。

    ここからいえることは、まず粗利率はほぼ差異がないが、営業利益率では黒字企業とは差異がみられる。売上に比べて、人件費、販売管理費が多いところは赤字となっている→人件費は適正か、販売管理費で無駄な出費はないか。
    第二に、従業員一人当たり売上高では黒字企業の方が大きいことからも、黒字企業の方が生産性が高いといえる→赤字企業は適正人員ではないのではないか。
    第三に、1客席当たり売上高をみると、黒字企業の方が大きいことからも、黒字企業の方が客単価が高いといえる。又、標準偏差が大きいことから各喫茶店によって、客単価はまちまちであるといえるのではないか→その喫茶店のコンセプトによって違うのでは?とにかく単価は安くとも回転率を上げることで売上をあげるところもあれば、単価を高く設定しているところもあるのではないか。
    最後に、当座比率については標準偏差が大きいことからもあまり参考にすべき指標とはいえないのではないか→そもそも喫茶店の場合は現金商売であり、手持ちの現預金が各々で全く異なることが予想される為、安全性の指標としては当てに出来ないのではないか。

    といった感じです。経営指標を持ちいてこういった推測をした後に改めて自社のB/S、P/Lの各項目を検証することで、より具体的な改善点、施策が浮かび上がってくるのではないかと思います。又、新規事業、開業時の場合は、とにかく標準偏差が大きいかどうかをみるとよいと思います。例えば、黒字且つ自己資本プラス企業と比較して営業利益率に差異がなく、尚且つ標準偏差が小さいとしたら、その業種はかなりの確度で事業を起こした場合、似たような数値になると見なすことが出来ます(もちろん確実にそうなるとは限りませんが!)。

    以上になりますー。

    ※小企業よりかは中企業を対象にした指標になります。

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    エニアグラムはタイプ4番、最たる強みは"収集心(マーケティング)"×"会計税務スキル" 専門商社にて総務経理のお仕事をしてます。 キャリアは会計事務所に入所。入所後は会計事務職として、会計税務、給料計算、社会保険手続き、登記手続き、法人税、消費税、所得税、相続税など様々な案件を経験(6~7年)。2013年に主任に昇格(2年)。2015年に会計事務所を退職。同年、専門商社へ転職(3年目~)。前職の経験を活かして、会計税務周りの仕事をしつつ、最近では与信管理、採用、企業PR業務に注力中。 興味分野は税務会計、テクノミュージック、宇多田ヒカル、ランニング、トレイルランニングです。 連絡先:dive4you(あっとまーく)gmail.com

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