節税目的の減資(無償減資)について

最近は、中小企業の優遇税制を適用することを目的として”減資”を行う企業が増えてきたように感じます。
そもそも、ここ数年で何故に減資の手続きが増えてきたのかというと、一つは税務上の“貸倒引当金制度の廃止”が大きく影響しているのかなと思います。
資本金1億円超の会社(税務上の大法人)であれば、税務上、段階的に貸倒引当金繰入額が損金算入出来なくなるというのは、金銭債権がかなりある会社であれば相当の税負担増となります。その為、税務上は”大法人”だけれども、企業規模で言えば”中小法人”に当てはまる会社や、一時一部上場を目指して増資はしたけれども、結局一部上場はせずに、売上利益等も平行線をたどっている会社などは税負担増を嫌って”減資”という意思決定をされてきているのではないかと思います。中には企業規模は”大法人”だけれども、あえて資本金を1億円以下にして、税務上は”中小法人”となっている会社もありますねwどことは言えませんが、TV通販の会社であったり、仙台の製造卸売業などですねw
それについては、今現在議論等なされているようですが、恐らく資本金ベースでの定義は変わらないと思います。ただ、新たな定義として、”従業員数”などを適用条件として付けくわえる可能性はあるかもしれません。こちらについては今後の法改正の行方を見守るしかありませんが、流石に資本金ベースで税務上の法人規模を判断するというのは少し時代にそぐわなくなってきているような気はしますね。実際に与信上の判断においても”資本金”で判断する経営者は少なくなっているようにも思いますしね。

ところで、減資をすると企業にとって何かデメリットがあるのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、基本的にはデメリットはありません。
あえて挙げるとするならば、“信用力の低下”ですね。実際に減資(無償減資)の手続きをして、株主総会の招集通知を発送したり、債権者保護手続きをすると、大多数の株主、取引先、金融機関から何か問題がおきているのではないか?と探りの問い合わせが必ずきます。これは、世間一般的には減資をすることの目的が節税目的ではなく、シャー○や吉本興○のような“累積赤字の補てん”と捉えることからそういったネガティブな反応があるのだと思います。なので、問い合わせがあった際は、累積赤字の補てん等が主目的ではないことと、官報にて決算公告&法定公告を掲載する旨もあえて伝えたほうがよいかもしれませんね。もしくは主要な取引先には事前に伝えておいた方がよいかもしれませんね。

さて、肝心の減資の手続きについてですが、

①株主総会決議
定時又は臨時株主総会の特別決議が必要。よって、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要になります。
※累積赤字の補てんの場合は、定時株主総会の普通決議で可能

②債権者保護手続き(官報公告、催告)
※官報公告については、事前に掲載日がいつになるか必ず確認した上で進めることをお勧めします。
仮に毎期決算公告をしていない場合、減資の公告に加えて、決算公告もしなければいけないことになる為、余計に掲載まで日数がかかる場合があります。
※催告については、個別に債権者に減資の旨をお知らせすることになります
※催告については、定款で電子公告ができるようになっている場合は、債権者毎に個別に催告する必要はないようです
※1か月以上にあたって、債権者からの異議申し出がないか期間を設けます

③効力発生日
※株主総会で定められた効力発生日が原則ですが、債権者保護手続きが終了していない場合は手続き終了後が効力発生日となります
※なので、官報公告と同時に催告等の手続きをした方がよいかと思います

④変更登記、届け出等
※効力発生日から2週間以内に登記手続きをします
※登記後は税務署、県、市役所に異動届を提出します

といったスケジュールになります。資本政策案件ですし、決してミスが許されない手続きですので、慎重にそしてスケジュールに余裕をもって進めることが重要になります。
また、株主総会の招集通知の発送後や債権者保護手続きをした後は多数の問い合わせが予想されますので、事前に質疑応答集なども準備された方がよいかもしれません。
基本、株主が少ない場合は決議までは滞りなく進むかとは思うのですが、取引先が多い場合、債権者保護手続きなどはかなり時間をとられるかもしれませんね。

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