中小企業の経理DXにおける諸問題について

2023年から2024年にかけて取り組まなければいけないインボイス制度の対応と電子帳簿保存法の対応、いわゆる経理DXについて実務的な対応を踏まえて思うままにつらつらと書いてみます。
まず結論ですが中小企業の経理DXは簡単にはできません。
いくつか主だった理由はあるのですが実務で携わった印象でいうと大きく2つ要因があるように思います。

一つ目はよくある話ですが費用対効果の問題です。
インボイス制度も電子帳簿保存法も大企業であればシステム導入やIT化を推し進める上での費用対効果をそれなりに見込みやすいのですが、企業規模が小さい企業であればあるほどさほど費用対効果が見込めません。
そもそも企業規模に見合った使い勝手のいいシステムの選定や構築が出来るかどうかといった観点からも経理DXの難しさはかなりあります。
正直な話、アナログのままの方が経費的にも時間効率的にも有用という見方も十分出来得るため、経営サイドがデジタル化、DX化を主体的に進めるくらいでないとなかなか進みがたいところがあるように思います。

次に社内人員の問題です。経理DXを推進する上で最大の問題といってもよいのですが、まず中小企業において、経理とシステム両方の見識があり、会社の経理実務を踏まえた上でシステムの選定からカスタマイズ、運用までを網羅的に出来る人が基本的に存在しません。
特に今回施行されるインボイス制度や電子帳簿保存法はどちらもこれからの経理実務に直接影響してくる大きな改正でもあり、経理実務の見識が深い人で且つシステムへの理解がある人材が細部にわたって対応することが非常に求められる制度改定であり、中小企業においては経理実務(具体的に会計処理や記帳業務など)を内製化出来ているかどうかが経理DXが出来るかどうかの一つの判断基準になってくるのではないかと思います。
会計事務所などに丸投げしている企業であれば、システム導入を進めるメリットも薄いですし、特段経理DXなどに取り組む必要性はないように思います(※それはそれで今までと何も変わりませんが・・)。
本当は会計事務所自体が企業と連携してDX化を推進できればよいのですが、中小零細の会計事務所に個別企業の経理DXをコンサルしてもらうというのは敷居が高いと思いますし、システム会社ではないのでそこを求めるのは少し筋違いなのかと。。
とはいえ、DX化や法改正の潮流を見ても、明らかに経理財務や会計事務所に求められる役割は変わってきており、年々システム寄りの見識が求められるようになってきていると感じます。

改正電子帳簿保存法とインボイス制度対策のための 経理DXのトリセツ
改正電子帳簿保存法とインボイス制度対策のための 経理DXのトリセツ

Posted with Buyer at 2023.05.24
prime

児玉 尚彦,上野 一也

日本能率協会マネジメントセンター

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中小企業のM&Aにおける諸問題について

お久しぶりです。
職業柄、中小企業のM&Aに携わる機会があり、肌感覚で感じている課題、現状より中小企業のM&Aを推し進める施策について思うままについて書いてみます。

①希望価格が折り合わない、希望条件が妥当ではない
非上場の株価については上場企業と異なり、明確にはないので、もともと妥当な価格を設定すること自体、難しさがあるというところもあります。
言ってみれば、売り手と買い手の希望価格が妥結に至れば極論ですがどういう価格設定であってもM&Aが成立する可能性があるというところが悩ましいところなのではないかと思います。
そのため、価格設定において、売り手と買い手、そして仲介業者と3者の思惑がほぼすり合わせられるかどうかが中小企業のM&Aの成約条件の一つといっても過言ではありません。

まず初めに売り手側にありがちな諸問題について書いてみます。
正直、売り手側の諸問題は非常に多岐にわたるのですが、最も多いところとしては会計税務知識の浅さから会社の価値を妥当な価格で経営者が捉えていないことが挙げられます。
もちろん、高い価格で売却したい思いはわからないでもないのですが、会社の財務や収益性を鑑みても首をかしげるような希望価格を掲げている会社を時より見かけます。
もし本当にM&Aによる事業承継を考えているのであれば、その段階で金融機関であったり、顧問税理士、会計士など様々なところに株価の算定を依頼し、専門家から見たおおよその自社の株価を客観的につかむことがとても重要です。

そういった段階を経ずに直接仲介業者に話をしても、その仲介業者のモラル次第ではありますが、時にはべらぼうに高い売却価格の可能性をほのめかしたりされることもありますし、そもそも買い手側からの提示価格が妥当かどうかの判断もつき難いと思います。

M&A仲介事業者は売り手、買い手から株価に応じて手数料をもらう商売である為、必然的に株価の交渉においては様々な思惑が入り込みやすいため、決して鵜吞みにせず、経営者として客観的な株価をもとに希望価格をどこに据え置くかはM&Aを成立するうえでとても重要です。

先に述べたようにべらぼうに高い希望価格であったり、個人的に都合の良すぎる条件設定の記載がなれている譲渡企業についてはいつまでたってもM&Aの成立はなされていないのが大半であることを踏まえると、M&Aにあたって客観的に株価を把握する機会を設ける仕組みを作ることはとても重要ではないかと感じます。
現状は株価の算定については金融機関やコンサルティング会社、顧問税理士、会計士に個別に経営者が依頼するか次第ですが、今後は非上場の株価算定についても何らかの仕組みや制度を設ける事も一つではないかと思います。

そうすることでより中小企業のM&Aの成立が進みやすくなるかと思いますし、売り手、買い手、そして仲介業者における価格設定における諸問題をスムーズに解決できるのではないかと思います。

②シナジー効果のある中小M&Aマッチングが簡単なようで難しい
これは非常に難しい問題なのですが、中小M&Aにおいて、譲渡企業、譲受企業においても、ベストなマッチング、組み合わせを見出し難いという問題があります。

まず大企業と比べて、中小企業の場合は財務的にも事業的にもさして優位性があるわけではなく、ほとんどが地域特性や利権、人間関係など複雑ながら大企業ではまずありえない要素が事業において多大な影響を与えていることもままある為、シナジー効果のあるマッチングを見出しがたいということがあります。
一言でいうと、さして事業における特徴や優位性がないため、そもそもM&Aするまでにも至らないというか・・。

また、これまで仲介業者からの提案においても、譲渡企業、譲受企業の事業内容や業界への理解が非常に欠けているケースが多々見受けられました。それゆえ、M&Aの提案を持ち掛けたとしても、売り手側、買い手側どちらにとっても将来的な方向性や価格以外のメリットを見出しがたく、これではどう頑張っても成約に繋がらないな・・と感じることもありました。仲介業者が特定の業界や事業への見識の深い方が携わってもらうことが理想ですが、現状出来ていないことを鑑みても今後も難しいのではないかと思います。
難しい問題ですが、より価格以外のメリットなどを享受出来得るようなマッチングの仕組みやM&A事例の集約がより求められると思います。
日本企業は意思決定において、前例や事例を参考にするところもありますし、事例の集約を進めながらも、仲介業者以外のプレーヤー、例えば、地方の金融機関、証券会社、コンサルティング会社など業界や事業の見識の深いプレーヤーの参入もあってもよいかもしれません。。結局、仲介業者となんら変わらない可能性もありますが(笑)
もしくはAIやシステムなどによるM&Aマッチングというのも今後の方向性としてはありかもしれません。

以前どこかの専門家が話したように、国内企業においては中長期的に人口減少、若年層の激減が生じる事を踏まえた時に企業の合併、統合による合理化は避けられません。とりわけ中小企業は未だに非効率な仕事の進め方がはびこっていることを踏まえると更なるM&Aは避けられないですし、国家としても推し進めるべきと考えます。

以上、つらつらと書いてみましたがこれから少しずつ更新していきます。

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2021年の抱負

Happy New Year

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
2020年は大きな節目となる一年でした。
コロナ禍という社会構造が激変する最中で、プレッシャーを抱えつつも大きなことを成し遂げることができ、ようやく自分がここにいる価値を創り出せたかなと。。
もちろん、今回の意思決定が正解かどうかはこれから次第ではありますが、
2021年は”更なる仕組化×合理化”に取り組む一年にしたいと思います!

①コミュニケーション活性化の仕組みを作る
昨年からスタートしているところではありますが、情報共有のシステムの入れ替えを検討しております。
十数年くらい手付かずな案件で良くも悪くも旧態依然になっており、形骸化が著しいため、もう少し情報共有しやすいシステムを導入し、コミュニケーション活性化&効率化したいと思っております。

②システムの更新
同じく昨年からスタートしている案件ですが、システムの更新を検討中です。システム案件なので私が携わらる機会は限られていますが、会計回りの判断が求められるかと思いますが、問題が生じないよう取り組めたらと思っています。また、会計全般を把握することで、より効率化できるところがないかも含めて精査していけたらと思っています。

③研修体系、マニュアルの整備
何度か抱負として掲げたところでもあるのですが、整備できておりません。
業態的に非常に難しい課題ですし、今絶対に手を付けなければいけない項目とは言い難いですが、中長期を見据えた時にはどこかで手を付けなければいけない項目ではあります。
非常に重い課題ですが、1~3年目に限った研修体系、マニュアルの整備など絞ってとりまとめられたらなと。
そうすることで、出来不出来の差を少しでも解消することと、早期戦力化につなげられたらなと。

④継続的な知識の獲得と実践
書籍については、マネジメント、会計税務、採用、経営計画、M&A、PMI、DXなど効率化、コスト削減、与信管理。労務管理、賃金体系、人事制度、年金などを幅広く読んでいきたいと思います。昨年はなんだかんだで50冊程度を読めたので、今年は年間60冊程度を目標。本で得た知識を都度実務に活かすことを念頭に置きつつ、取り組みたいと思います。
その他、引き続き総務経理、労務関連、経営関連の雑誌を定期的に購読していきたいと思います。また、関連するセミナーなどにも積極的に出席したいと思います。

それと今年は今一度、会計税務(退職給付、税効果、株価評価、M&A、グループ会計税務等)を今一度じっくり勉強しようかなと。こちらは日々、喫茶に通うことで学習時間を強制的に確保していきたいと思います(1日1時間程度)。

⑤健康管理
今年は3か月間程度絞り込んだうえで、本格的な筋トレに挑戦します!
筋肉質な体作りを目指すことで、太りやすい体質を改善したいと思います。

⑥ブログの更新
ここ数年は大幅に更新が停滞しておりますが、少し時間をとって最低月1本でも更新していけたらなと。
主に会計税務をメインに様々更新していきます。

⑦プライベートの充実
昨年は温泉巡りしたりと自分で言うのもなんですが、比較的プライベートが充実していたように思います。引き続き、余暇をただだらだら過ごすことなく、積極的に日々動き回りたいと思います。その結果が巡り巡って、よい出会いがあれば・・と思います。
以上、大小さまざまな目標を掲げましたが、定期的に進捗確認することで、確実に実行するべく動きまくる一年にしたいと思います!

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数字は踊る!

Accounting ..

仕事柄、数字を扱う仕事をしてるのだけれど、常に意識していることとして、貸借対照表、損益計算書において、”インパクトのある物事に目を付けて意思決定すること”に取り組むことが最重要課題だと考えている。
数字屋なので、どうしてもコスト削減やわかりやすい経費削減に走りがちなのだけど、冷静に全体を見据えて考えると、大概コストインパクトのある項目は左程ないことに気づくわけではある。
あるとしたら、不採算事業の精算だったり、税務テクニックによるコスト削減程度である。
それは全て手を付けた。
では人件費はどうか?手を付けると最も効果的ではあるけど、麻薬のようなもので、中長期で悪い方向に向かうこともあるので、緊急事態以外は手を付けるべきではないと個人的には思っている。
さて、そこからが問題である。個人的にはコスト削減はやりようによってはまだある程度は可能だと認識しているが、大してコストインパクトはあるわけではない。せいぜい売り上げの0.01~0.1%の世界である。

であるならば、やはり”売上粗利の構造を変えること”に注力するべきと考える。
ただ全部が全部そうではないけど、何故かわからないけど、”売上粗利の構造を変えること”に挑む人、会社は何故か少ない。
なんでかわからないけど、色々な人に話を聞くたびに、不思議だな・・と思うのだけど、”売上粗利の構造を変えること”に挑む人、会社は非常に少ない。
確かに、それは単なるコスト削減と違って、簡単ではないし、いえば効果が明確に出る話では決してない。
血を流しながら、試行錯誤して、あーだこーだ結果を見つつ、PDCAを繰り返さないと何が肝かは見えてこない。
非常に困難だし、手間がかかる仕事なわけで、答えは簡単に見つからない。
でも、最もコストインパクトが強い項目ではあることが誰もがわかっているはずなのに、手を付ける人は何故か非常に少ないんだよね。。

何が正解かわからないし、現状は失敗だらけだけど、血を流しながらでも、這いつくばっても結果を出すことに拘りたいし、それが今の自分に求められていることなのかなと思う。
今年一年に泥にまみれて、他人に笑われようが頑張りたいです。てか、頑張りますよ!

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平成29年度税制大綱についての所感

Taxes

平成29年度税制大綱について、さらっとですが所感。
詳細については、財務省の税制情報にてご確認下さい。

①個人所得課税

  • 配偶者控除&配偶者特別控除の見直し
  • 積立NISAの設立
  • 個人所得課税については、配偶者控除の見直しが大きなトピックと言えそうです。
    具体的には、配偶者控除の適用対象を給与収入150万円(所得金額85万円)に引き上げ。配偶者の給与収入が201万円以上となると、配偶者特別控除の対象外となるとのこと。
    合わせて納税者本人に所得制限を導入。給与収入1,120万円以上から控除額を低減。給与収入1,220万円で控除対象外となるようです。
    給与収入103万円→150万円ですから、年間で50万円程度、月間で4万円程度、収入がアップしても配偶者控除の適用となるとのことで、一か月で50時間超くらいは主婦層等のパート、アルバイトの活用がよりできるようになるということで、パート、アルバイトなどの労働意欲がより増すのではないかと。
    正社員が大半な組織ではあまり影響はありませんが、労働集約的で且つパート、アルバイトの比率が多いところは人手不足の解消とまではいかないかもしれませんが、それなりにプラスの影響があるのではないかと思います。
    個人的にはもう少しドラスティックに変えてもよいのではないかとも思うのですが、老年世代は専業主婦が多いようですし、影響みつつ少しずつ変えていくしかないのかなと。
    いずれにせよ人口が縮小していく一途を辿ることと共働きが一般的になってきている昨今では、配偶者控除の廃止はどこかの時点で提言しないといけないような気はします。
    それはそれで専業主婦層から反発はありそうですが、国家全体を考えたら、どこかの時点でやるべきなのかなと。
    積立NISAについては、若年層や夫婦等の株式投資をより進めるという目的で設けた制度と言えそうです。
    具体的には、非課税期間が20年、年間投資上限額が40万円ということで(上限はも少しアップしてもよいかな・・)、内容からも貯蓄→投資への分配をより促す為の仕組みと言えそうです。
    株式の知識があまりない人、株式投資に時間をさけることの出来ない人向けの非課税制度と言えそうです。
    ニーズはあると思うので、そこそこ受けそうな気はしますね。
    唯一、惜しいなと思うところは、現行のNISAと選択適用というところ。
    貯蓄→投資への分配を促すという意味では、あえて制限を設ける必要はないのかなと。
    短期、長期投資を併用して進めたいという人もいるでしょうしね。

    ②資産課税

  • 事情承継税制の見直し
  • 償却資産に係る特例措置の追加
  • 居住用高層建築物に係る課税の見直し
  • 事業承継税制については、相続時精算課税制度との併用を認めるとのことですが、
    はっきり言ってこの制度は制約が大きいこともあって、非常に使い勝手が悪いです。
    企業経営を行うにあたって、5年間も制約を受けなければいけないというのは、ちょっと厳しすぎますし、会社の状況によっては事業承継者が抜本的な改革を行わなければいけないということも十分ありえるはずです。今回、相続時精算課税制度との併用を認めることでいくらかリスクは軽減されますが、ここ最近の廃業数が増えていることも踏まえると、一族承継拘らず、内部昇格、外部承継をより柔軟にすすめやすくする制度が求められているように思います。事業承継税制についてはよりよい税制案を示してほしいです。でないと地方はより一層疲弊してしまいます。。
    居住用高層建築物に係る課税の見直しについては、所謂タワマン節税対策ですね。
    取りたてて述べることはないですが、とりあえず、見直しは必要だったのかなと。

    ③法人課税

  • 研究開発税制の見直し
  • 所得拡大促進税制の見直し
  • コーポレートガバナンス・事業再編の環境整備
  • 中小の優遇税制の厳格化
  • 中堅・中小企業の支援
  • 法人課税については、大きなトピックとしては、中小の優遇税制の厳格化とそれに伴った、中小企業向けの税制の拡充でしょうかね。
    具体的には、今まで税務上の大会社と中小会社との区分が資本金ベースだったものが、3か年の平均所得金額が15億円以上の会社については、資本金が1億円以下であっても中小優遇税制の適用対象外とする制度を設けるとのこと。
    ここ数年、節税目的の減資が増えていたこともあって、資本金ベースでの判断基準を見直すべきとの話は至る所で出ておりましたが、遂に見直しがなされたのかなと。
    厳格化した上で、中小企業の優遇税制をより手厚くしようという方針ですから、非常に理にかなった取り組みではないかと思っています。
    中堅・中小企業の支援、優遇税制については、所得拡大促進税制の拡充(賃上げ2%以上で法人税額22%控除)、中核企業向け設備投資促進税制、中小企業投資促進税制の拡充等々。
    中核企業向け設備投資促進税制は詳細がわからないところはありますが、計画書が必要且つ総投資額2000万円以上の事業で機械・装置の取得額の4%の控除か40%の特別償却。建物や設備などは2%の控除か20%の特別償却が出来る税制とのこと。どこまで受けるかわかりませんが、地方会社の攻めの投資をよりしやすくする制度はあってよいのかなと思います。
    そういう意味では、今年3月末期限の生産性向上設備促進税制が一番使い勝手がよかったのですが・・・。
    また、中小企業都市促進税制の拡充については、全ての器具備品、建物付属設備を対象にするとのこと。より使い勝手がよくなって利用する会社が増えそうです。
    その他、法人課税については、”組織再編税制の見直し”ということで、スピンオフ(会社分割)を柔軟に出来るような制度を導入するとのこと。今までは事業を売却したとみなされることもあり、新会社の時価と帳簿上の価値との差額が譲渡益となり、事業を切り出した法人に課税される仕組みとなっていたが、今後は事業を切り出した企業の譲渡益、新会社の株式を受け取った既存株主ともに課税を繰り延べして、スピンオフができるようになるとのこと。
    ここ最近、会社分割など組織再編周りの案件が増えていることを踏まえると、組織再編周りの整備はより進めるべきと思います。目的は組織再編を柔軟にすることで、会社の活性化をしやすくするということですね。
    ついでいうと、国内外問わず、M&Aの活性化を進めるという意味で、のれんの償却をなくした方がよいのかなと・・・。国内に限っていうと、M&Aが事業拡大の一手段というよりかは事業承継の一案という側面も強くなってきつつあるようで、M&A周りの環境整備もより求められているように思います。
    まとめると、ここ数年間で劇的に国内の環境が変わるであろうことを踏まえると、
    法人課税の整備が最も重要になってくると思われます。
    これまで以上に企業活性化につながるような制度の導入を期待したいです。

    ④消費課税

  • 酒税改革
  • 車体課税の見直し
  • 仮想通貨の消費税非課税化
  • 消費課税については、取りたてて大きなトピックはありませんが(特定企業にとっては大きなトピックはあるでしょうがw)、一点気になるところと言えば、仮想通貨の非課税化ですかね。仮想通貨の仕組みについては正直詳しくありませんが、非課税化ということで、より流通されていくのかなと。今後の動きはしっかり把握していく必要はありそうです。

    全体的な感想をいうと、選挙後ということもあってか、昨年の税制大綱で先送りした案件に手を付けたのかなという印象。大きな一歩と言えそうです。日本は東京オリンピックまではよい流れで行きそうですが、その後はかなり厳しい業況が見込まれることもあり、より企業の活性化をすすめるべく抜本的な改革が必要になってくるような気がします。

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    キリンビール高知支店の奇跡

    「キリンビール高知支店の奇跡」を読了。
    営業に関するマネジメントという意味では、特筆すべき内容が書いてあるわけではないですが、
    メーカー営業拘わらず、どの仕事の営業にも言えることだと思います。
    今一度、基本を徹底する、基本を振り返るという観点でみれば、一度読むことで得るものはあるかと思います。
    その他、地域ごとに戦略を練る、地域に寄り添った対策を考えることについては、ユニークなところかもしれませんね。最近では、地域ごとにCMを変えたり、地産地消な商品の提供をしているところも増えてきていますし、トップダウンの営業施策ではなくて、ボトムアップ型の営業施策の方がその地域ごとの現状に合わせたやり方ができるのかもしれませんね。

    以下、メモ。
    〇結果のコミュニケーションとは?
    メンバーの自発的目標をしっかり定め、リーダーと約束したうえで、効果検証をしっかり行う。
    やり方は個々人に任せ、とにかく目標を達成できたかどうかのみを徹底的に確認することとフィードバックを行うことが大事。

    〇経営は実行力
    現場の実行力を挙げることにこそ意味がある。
    ①主体性を持つ
    自分で考え、行動して、主体的に議論する。組織や立場に問わられず、最終目標に向かうために自由に意見を述べること。主体性をもった組織こそ強い。
    ②結果を出すことにこだわる
    負けるということは、お客様の満足が低下したということ。
    ③基本を徹底する

    〇あるべきリーダー像
    マネジメントの本質は、正しい判断が出来て、正しい支持を出せて、指示が言いっぱなしになっていないか現場をしっかり把握することに尽きる
    ①正しい決定を下せる
    ②現場を熟知している
    ③覚悟と責任感をもっている

    〇田村語録
    ①事実をベースに考えつくす
    只管考えること。未来は予測できないが、創ることができる。
    ②理念、ビジョン
    理念、ビジョンを明確にすることで、困ったときの指標や基本を徹底する上での行動基準となる
    ③腹をくくる
    リーダーが部下の信頼を勝ち取るのは、沸騰する熱を発しているとき。
    その熱を伝えることとしっかりと結果を出すことにこだわる
    ④動きのあるものとして捉える

    キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! (講談社+α新書)

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    IGPI流ローカル企業復活のリアルノウハウ

    「IGPI流ローカル企業復活のリアルノウハウ」を読了。
    ローカル企業の経営ノウハウについて書かれていますが、結構当てはまる箇所が多々ありますね。当たり前の話ですが、ローカル企業は企業体力自体が盤石というわけでもないので、しっかりとした体制が築けていない会社が多いです。そういう意味で、やるべきことをしっかりやれば、結果が出やすいというのは確かにあると思います。どちらかというと、こんなことも出来ていない、把握できていないのか・・・と感じることが多いですしね。そちらの手続き、やるべきことについては本書は大変参考になる点が多く書かれてるかなと。ただ、やるべきことをやった上で大きく飛躍するために、”次の一手”の参考にということであれば、そこまで期待はできない内容ということにはなるかもしれません。あくまで基本に忠実な経営本ということになるかと思います(それすら出来ていないローカル会社の方が多いですけど・・・)。

    ということで、以下メモ。
    〇選択捨象マトリックス
    コア事業かノンコア事業か(最もマネジメントに自信がある事業はどれか)
    good事業(長期的に収益力が高く、投資効率も高く、リスクマネジメントができるか)かbad事業か
    コア×goodを伸ばすことに注力。

    〇付加価値について
    付加価値が高いほど、会社の内部の打ち手による収益改善のインパクトが強い。逆に付加価値が薄い程、内部の改善ののりしろは薄く、取引先や競争環境、マクロ的な外部環境の影響によって収益が左右されやすい
    イメージで言うと、製造業→付加価値高く、社内の意思決定の影響度が大きい。
    卸売→付加価値低く、外部環境次第でどうとでもなる。内部の打ち手は限られている。

    〇見えるかについて
    外部環境を見ながら付加価値が薄い事業ほど、製品別、販売先別、仕入先別、地域別、拠点別など細分化して見える化に努める。卸売業とかそうですね!

    〇事業の特性把握マトリックス
    「広さ」地域内で行うか地域関係なく選択できるか
    「深さ」顧客に対してどれくらい価値提供しているか顧客のエコノミクスにどれだけインパクトを与えているか
    「厚み」事業がどれだけ付加価値の厚みをとれているか
    「数」競争要因が限定的であるかどうか

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    節税目的の減資(無償減資)について

    最近は、中小企業の優遇税制を適用することを目的として”減資”を行う企業が増えてきたように感じます。
    そもそも、ここ数年で何故に減資の手続きが増えてきたのかというと、一つは税務上の“貸倒引当金制度の廃止”が大きく影響しているのかなと思います。
    資本金1億円超の会社(税務上の大法人)であれば、税務上、段階的に貸倒引当金繰入額が損金算入出来なくなるというのは、金銭債権がかなりある会社であれば相当の税負担増となります。その為、税務上は”大法人”だけれども、企業規模で言えば”中小法人”に当てはまる会社や、一時一部上場を目指して増資はしたけれども、結局一部上場はせずに、売上利益等も平行線をたどっている会社などは税負担増を嫌って”減資”という意思決定をされてきているのではないかと思います。中には企業規模は”大法人”だけれども、あえて資本金を1億円以下にして、税務上は”中小法人”となっている会社もありますねwどことは言えませんが、TV通販の会社であったり、仙台の製造卸売業などですねw
    それについては、今現在議論等なされているようですが、恐らく資本金ベースでの定義は変わらないと思います。ただ、新たな定義として、”従業員数”などを適用条件として付けくわえる可能性はあるかもしれません。こちらについては今後の法改正の行方を見守るしかありませんが、流石に資本金ベースで税務上の法人規模を判断するというのは少し時代にそぐわなくなってきているような気はしますね。実際に与信上の判断においても”資本金”で判断する経営者は少なくなっているようにも思いますしね。

    ところで、減資をすると企業にとって何かデメリットがあるのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、基本的にはデメリットはありません。
    あえて挙げるとするならば、“信用力の低下”ですね。実際に減資(無償減資)の手続きをして、株主総会の招集通知を発送したり、債権者保護手続きをすると、大多数の株主、取引先、金融機関から何か問題がおきているのではないか?と探りの問い合わせが必ずきます。これは、世間一般的には減資をすることの目的が節税目的ではなく、シャー○や吉本興○のような“累積赤字の補てん”と捉えることからそういったネガティブな反応があるのだと思います。なので、問い合わせがあった際は、累積赤字の補てん等が主目的ではないことと、官報にて決算公告&法定公告を掲載する旨もあえて伝えたほうがよいかもしれませんね。もしくは主要な取引先には事前に伝えておいた方がよいかもしれませんね。

    さて、肝心の減資の手続きについてですが、

    ①株主総会決議
    定時又は臨時株主総会の特別決議が必要。よって、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要になります。
    ※累積赤字の補てんの場合は、定時株主総会の普通決議で可能

    ②債権者保護手続き(官報公告、催告)
    ※官報公告については、事前に掲載日がいつになるか必ず確認した上で進めることをお勧めします。
    仮に毎期決算公告をしていない場合、減資の公告に加えて、決算公告もしなければいけないことになる為、余計に掲載まで日数がかかる場合があります。
    ※催告については、個別に債権者に減資の旨をお知らせすることになります
    ※催告については、定款で電子公告ができるようになっている場合は、債権者毎に個別に催告する必要はないようです
    ※1か月以上にあたって、債権者からの異議申し出がないか期間を設けます

    ③効力発生日
    ※株主総会で定められた効力発生日が原則ですが、債権者保護手続きが終了していない場合は手続き終了後が効力発生日となります
    ※なので、官報公告と同時に催告等の手続きをした方がよいかと思います

    ④変更登記、届け出等
    ※効力発生日から2週間以内に登記手続きをします
    ※登記後は税務署、県、市役所に異動届を提出します

    といったスケジュールになります。資本政策案件ですし、決してミスが許されない手続きですので、慎重にそしてスケジュールに余裕をもって進めることが重要になります。
    また、株主総会の招集通知の発送後や債権者保護手続きをした後は多数の問い合わせが予想されますので、事前に質疑応答集なども準備された方がよいかもしれません。
    基本、株主が少ない場合は決議までは滞りなく進むかとは思うのですが、取引先が多い場合、債権者保護手続きなどはかなり時間をとられるかもしれませんね。

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    平成28年度税制大綱についての所感

    Tax

    平成28年度税制大綱についての感想をさらっとですが述べてみる。
    詳細については財務省の税制情報を見てください。

      ①個人所得課税

    • 空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の導入
    • 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る税額控除制度の導入
    • スイッチOTC薬控除の導入
    • 個人寄付税制の包括的な見直し

    個人所得課税については、今の時代に沿った空き家&リフォーム周りの税制などがどれほど活用されるかは興味があるところです。単年ではどれほどの効果があるかはわかりませんが、年度ごとに税制の効果検証をした上での長期的な運用を望みたいところです。

      ②資産課税

    • 農地保有に係る課税の強化・軽減
    • 機械及び装置の固定資産税の特例措置の創設

    資産課税については特筆すべきものはないですが、機械装置の固定資産税の軽減制度は活用される方はいるかもしれませんね。とはいえ、3年間限定ですし、税務的なメリットが大きいわけではないですが・・・。

      ③法人課税

    • 法人税改革、法人税率の引き下げ
    • 租税特別措置法の見直し
    • 地方法人課税の是正
    • 企業版ふるさと納税
    • 復興支援のための税制措置

    法人課税についてはやはり法人税率の引き下げ、そして租税特別措置法の見直しが大きなトピックと言えそうです。租税特別措置法については、生産性向上設備投資促進税制の縮減・廃止ということで、期限延長はしないとのこと。大企業も活用できるということで、非常に使い勝手のいい税制だったのですが残念ですね。また雇用促進税、環境設備投資税制なども若干の税制変更があったようで、再度確認が必要ですね。租税特別措置法については、適用額明細書の分析結果をしっかり生かして毎期の税制案の策定&改正に活かしてほしいところです。雇用促進税制なんかはまだまだ活用しきれていない企業が多いように思いますしね。所得拡大促進税制などもねー。

      ④消費税

    • 軽減税率の導入
    • 免税店制度の拡充
    • 車体課税の見直し

    今年一番のトピックといえばやはり軽減税率の導入でしょう。まだ具体的なところは詰め切れてないように思いますが、より一層消費税の仕組みが複雑化することは間違いないと思います。実務で考えたときに、消費税額の検証がより複雑化し、手間がかかることこの上ないですし、レジなどの設備投資は当然のごとく必須になることは間違いないですし(補助は出るようですが)、また業種によっていい影響を受けるところもあれば、悪影響を受けるところもあるわけで、なんだかそれはそれでいいのか?と個人的に思ってしまいます。。さりげなーく、新聞が軽減税率の対象になってたりしますしね。もちろん、最終消費者にとってはいいことではあるんですが・・・。選挙を見据えた妥協案という気がしますね・・・。
    他には免税店制度の拡充(1日1店舗当たり1万円以上から五千円へ引き下げ)などは昨今の爆買ブームに乗った施策と言えそうです。こういうのはもっとやってほしいですねー。

    全体的な感想を言うと、選挙を見据えたのか妥協案に終始したかな・・・という印象が強いです。配偶者控除の廃止とか中小企業の定義の変更とか(資本金1億円以下なら中小企業とかの話ね)もっと抜本的な見直しを進めるのかな?と思っていたのですが、選挙前だと流石に難しいのかもしれませんね。長期的な安定政権を目指すことを第一優先に考えるならばそれも仕方がないことかもしれませんね。

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    雇用促進税制

    「まだ、ここにない、出会い。」リクルートの思いはぼくの思いに通じている。

    雇用促進税制とは、適用年度中に雇用者数を5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上増加させるなどの一定の要件を満たした場合、雇用者数増加辺り1人につき40万円の税額控除が受けられるという制度になります。
    ただし、本税制の適用を受けるためには事前にハローワークに雇用計画の提出をする必要があります。

    詳細の要件については、

  • 青色申告者であること
  • 雇用者数を5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上増加※1
  • 適用年度と前事業年度に事業主都合による離職者がいないこと
  • 適用年度の給与支給額が比較給与支給額以上であること※2
  • ※1 10%以上増加の定義としては、雇用増加割合(10%以上)=適用年度の雇用増加者数/前事業年度の雇用者数
    ※2 比較給与支給額とは前年度の給与支給額+前年度の給与支給額*雇用増加割合*30%を指し示す
    などがあります。
    詳細についてはこちらを参照してください。

    本税制のメリットは、やはり一人当たり40万円の税額控除が受けられるということにつきるでしょう。税額控除ですから、結構な節税策です。採用難で困っている中小企業にとっては、採用に力を入れるいいきっかけにはなるかと思います。ただ、現状で見た場合、そこまで利用されているかというと、そうでもないようです。26年度の雇用計画の達成状況(PDF注意!)をみると、30,000件超、事前計画は受け付けてはいるのですが、実際の達成件数は6,000件超と20%しか計画が達成していないと惨憺たる状況です。この数字を見る限り、現状の雇用促進税制は、企業の採用計画とうまくマッチングしきれていない制度なのかなという気がします。とりわけ先の要件の中で①10%以上増加、②給与支給額>比較給与支給額の2要件が厳しいのかなと。普通に考えて、雇用者総数の10%以上というのは、かなりハードルが高く、中小企業よりの仕組みではないのかなといった印象です。中小企業であっても2人以上採用を検討している会社はありますが、そもそも採用計画自体をきちんと立案している会社自体少ないですし、ハローワークに事前申請の手続きをすること自体知らない会社が多いです。実際は計画未達であっても、税制の適用にならないだけではあるんですが・・・。個人的な要望をいうと、事前申請ではなくとも適用になるとか、税額控除に限らず、何らかのインセンティヴが別にあってもいいのでは?という気がします。

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